※奥州にて、日常の一コマ。
※ユリちゃんは伊達軍の忍をやっています。

※作者はBASARA未プレイです。アニメと一部コミックしか知りません。
  いろいろ違うところがあってもそっと見逃してやってください…(土下座)















お気に入りの木の上で百合がくつろいでいると、にわかに屋敷が騒がしくなった。

「政宗様! どちらにおいでですか、政宗様ーッ」

小十郎の必死な声が聞こえてくる。
状況から察するに、朝から執務室にこもって書類処理をしていたはずの主がいなくなってしまったようだ。
百合は政宗が有する忍組織、黒脛巾組の守り頭である。
もし賊が押し入り政宗を誘拐したのならすぐさま百合の元に報告が入っているはずで、それがないということはおそらくいつものように政宗自身による逃亡ということなのだろう。

「…百合様」

百合の座るところより一段低い位置にある枝に部下の一人が姿を現した。
それから告げられた内容に、百合はぐりぐりとこめかみをもんだ。まったくあの主は。

いくつか部下に指示を出すと、百合はひらりと姿を消した。





「政宗様」
「思ったより遅かったな? Honey. 待ちくたびれたぜ」
「誰がHoneyですか…」

城から離れ、森の中を走ること四半刻。
百合はようやく清流の側で馬を休ませている政宗を見つけ、その側へと降り立った。

「また勝手に一人で抜け出して。部下達を困らせるのも大概にしてください」
「Hey kitty, つれないこと言うなよ。このオレとのdateを嫌だと言うわけねェよな?」

唇の端をつり上げて、政宗は不適に笑む。
百合はひとつ大きなため息を吐いて、お好きにどうぞと投げやりに言った。

実のところ、政宗が単身で脱走することは一度や二度のことではない。
さすがに護衛としてついている忍までまくことは滅多に無いのだが、逆に忍が付いてンだからかまわねえだろと言い張って供も付けずに抜け出すのがこの主の常であった。
いい加減百合も百合の部下達も小十郎も慣れきってしまったのでいつもたいした騒ぎにはならないが、戻った後に頼むから政宗様をいさめてくれと小十郎から懇願される自分の身にもなって欲しい。

「それで、どうして馬を二頭も連れているんです?」

百合の目の前には、政宗の愛馬とは別にもう一頭が草を食んでいる。
若干小柄ではあるものの、面構えも体つきもしっかりとした上等な馬だ。
政宗はその馬を呼び寄せると、すり寄ってくる鼻面をなでながら言った。

「あァ、こいつはお前のぶんだ。遠乗りに行こうと思ってな。付き合え」
「…忍を馬に乗せてどうするんです」

馬に乗ることは、できる。それなりの腕前を持っている自負もある。
が、忍という立場上百合が馬に乗ることはほとんどなかったし、政宗の前で乗ったこともない。
どうして知っているのかと視線で問えば、政宗は自信の右目をとんとんと叩いた。

「乗れねェってわけじゃねえんだろ? 小十郎からかなりの腕前だと聞いたぜ」
「小十郎様…。言わないでくださいと、あれほどお願いしたものを」
「Ha! このオレに隠し事なんざ百年早え」

以前百合が馬に乗ったとき、その場に居た小十郎にはおそらくこうなることがわかっていたからこそ黙っていて欲しいと頼んだのだが。
大人しくなでられていた馬が政宗から百合の方へと寄ってくる。
わざわざ百合の体格に合わせて選ばれたらしいこの馬は、しかし決して大人しい馬というわけではないようだった。
顔を百合にすりつけて、早く走りたいと雄弁な瞳が訴えてくる。
百合は折れた。

「仕方ないですね。今回だけですよ」
「Don't say a heartless thing, honey.
 あァ、今の間くらい敬語もハズせ。Dateには無粋ってもんだ。You see?」
「…………I see. 戻ったらちゃんと仕事しなさいよ」

楽しげに笑う政宗からしぶしぶ手綱を受け取って、百合は今日一番のため息をついた。




もし伊達軍の忍だったら 〜遠乗り〜

やっと筆頭出せた〜。いろいろと難しいぜ筆頭。
夢っぽくちょっとは恋愛要素入れられたらいいな!とか思ったら無理でした。
所詮私には甘い物は書けないようです…(遠い目)
ちなみに筆者は英語は全くできません。
筆頭の英語はエキサイトな翻訳さんに突っ込みました(笑)
変なところがあっても見逃してやってくださいませ。

※ Don't say a heartless thing. (つれねェことを言うなよ。)
2012.7.30