※取引期間中のどこかだと思われます。 ※作者はDS版とPSP版のカーティスルートくらいしかプレイしてません。 ※偽物注意報発令(特にカーティス) ※こんなの○○じゃない!と思ったら即ページを閉じて記憶を消去することをオススメします。特にカーティス。苦情の類は勘弁してください。作者が一番こんなん違ぇええええええええ!と思ってますから…orz 早朝、カーティスを探してスラム街を歩いていたアイリーンはカーティスの部下たちがなにやら集まっているのを見つけた。 話し合いでもしているのかと思いきや、その雰囲気は遠目から見てもわかるほどに賑やかだ。 一体何をしているのだろうと好奇心がむくむくとわき上がってくる。 以前の教訓を活かして特に気配を消さずに近づいていくと、部下たちもすぐにこちらに気付いたようだ。 「プリンセス。おはようございます」 「おはよう。何をしているの?」 挨拶をしてくれたうちの一人の手元をひょいと覗き込む。 暗殺者らしい無骨なその右手には、白い紙に包まれたサンドイッチがあった。 見た目からしてしっとりと柔らかそうなパンにスライスされた肉や野菜が挟み込まれ、オレンジ色のソースも見える。 野菜のみのもの、ソーセージが入っているもの、卵がはさまれたものなどバリエーションは豊かで、とてもおいしそうだ。 「食事中だったの? 邪魔しちゃってごめんなさい」 「いえ、大丈夫ですよ。今はちょうどユリ様…カーティス様の幼なじみの方なのですが、その方お手製の朝食を配ってる最中でして。お見苦しいものをお見せしてしまい、申し訳ありません」 見れば部下達は大きめのバケットに入ったサンドイッチの取り合いをしている。 表情を見る限りは本気の奪い合いのようだが、不思議と武器や暗器の類は使っていないようだ。 軽い殴り合いこそあれ、怪我人が出るようなやり取りは見受けられない。 一方、おそらく地位の高い幹部であると思われるメンバーはしっかりと白い包みを確保して安全な場所へ避難していた。 無事手に入れることができた者は皆一様に頬がゆるみ、いそいそと包みを開けてかぶりついている。 とても手練れの暗殺者とは思えないほどの喜び様だ。 だが、それよりもアイリーンは部下の口から出てきた名前の方に驚いた。 思わずサンドイッチと部下の顔を二度見する。 「ユリって、黒髪の女の子?」 ユリの名をアイリーンが口にすると、部下は驚いたようだった。 ご存じでいらっしゃったのですか、と聞き返してくる。 「昨夜酒場でカーティスと一緒に飲んでいたのを見かけたのよ。肩につくくらいの黒髪の、私と同年代くらいに見える子でしょ? 食事を配ってるってことは今、近くにいるの?」 「はい。カーティス様の家にいらっしゃるはずですよ。いつも私達に配った後はカーティス様とお食事をとられていますから」 よろしければご案内いたしましょうか、と部下の一人が進み出る。 一瞬考えた後、好奇心が勝ったアイリーンはその申し出をありがたく受けることにした。 スラムの奥は入り組んでいて、慣れない者にとっては同じような場所をぐるぐると回っているような錯覚を抱かせる。 アイリーンが道を覚える努力を放棄してしばらく。 案内役が立ち止まったのはとりたててなんの変哲も無いひとつの扉の前だった。 「カーティス様の家はこちらです。お二方ともプリンセスには気付いていらっしゃるでしょうから、そのまま入って大丈夫ですよ。それでは、私は失礼します」 「ええ、ありがとう」 すっと部下の姿が消え失せる。 その早さにさすがと感心していると、目の前の扉の奥からわずかな話し声が漏れ聞こえてきた。 案内役はそのまま入って大丈夫だと言っていたが、さてどう声をかけたものか。 まずはノックからがマナーだろうとアイリーンが扉を叩くよりも一瞬早く、扉が静かに開く。 その唐突さにびっくりしてアイリーンが立ち尽くしていると、自宅にいるというのに気配を消したまま扉を開けたカーティスがにこりと笑んでさあどうぞと中へ招き入れた。 「侘びしい住まいにお招きしてしまって申し訳ありませんね、プリンセス。我が家へようこそ」 「気配を消したまま開けないでよカーティス。びっくりしたじゃない」 おじゃまします、と一応言ってから中へ入る。 ちょっと睨むようにして苦情を言えば、カーティスはまだまだ修行が足りませんねえと言ってさらっとかわしてみせた。 と、そこへ呆れたような第三者の声が割って入る。 「素人相手にあなたの気配を読めなんて無茶ぶりも過ぎると思うけど」 「あ……えっと、昨日の」 アイリーンが慌てて声の主を振り返ると、そこにはあきれ顔の少女(というには大人びているが)が立っていた。 酒場では薄暗かったのと遠目だったのでいまいちよくわからなかったが、こうして改めて観てみるとギルカタールにしては珍しい抜けるように白い肌と磨かれた黒曜石のような黒目黒髪を持っている。 身長は高くも低くもなく、体格はどちらかというと華奢だが、まくられた腕を見る限り全く筋肉がついていないというわけではないようだ。 年齢はやはりぱっと見ただけでは判断できなかった。 「初めまして。って言っても、酒場で一度会ってはいるのよね。私はアイリーン=オラサバルよ。あなたは、ユリさん?」 「…初めまして、プリンセス。ユリと申します」 ユリは略式ではあるが王族に対する礼を取って見せた。 その動きは洗練されていて、もしかしたら誰かに仕えたことがあるのかもしれないとアイリーンは感じた。 カーティスは身分のある人間が大嫌いだが、ユリはそうでもないのだろうか…。 「堅苦しい言葉遣いはなくていいわ。私も、ユリって呼んでもいいかしら」 問えば、ユリはぱちりとおおきく瞬いた。 わ、まつげが長い…、と妙なところにばっかり意識を持って行かれそうになる。 ふっと表情を和らげると、ユリは頷いた。 「わかった。……話に聞いてはいたけれど、面白いプリンセスね」 抱えていたバスケットテーブルに置いて、くすくすと笑う。 「これから食事にしようかと思っていたのだけれど。良かったら一緒にいかが?」 示されたバスケットには先ほど部下達が持っていたものより数段豪華なサンドイッチが並んでおり、空腹を誘うスープの香りも漂ってくる。 朝食は城で済ませてしまったが、こんなチャンスを逃すわけがない。 もちろんと頷いて、アイリーンは席に加わった。 プリンセスとお知り合いになろう編3
別腹発動(違) 2012.9.10
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