※取引期間中のどこかだと思われます。 ※作者はDS版とPSP版のカーティスルートくらいしかプレイしてません。 ※偽物注意報発令(特にカーティス) ※こんなの○○じゃない!と思ったら即ページを閉じて記憶を消去することをオススメします。特にカーティス。苦情の類は勘弁してください。作者が一番こんなん違ぇええええええええ!と思ってますから…orz 「カーティス」 「なんです?」 「移動魔法使うから、つかまって」 「いやです」 「拒否権はないから」 酒場を出ると、闇に紛れて夜の街を駆けていく。 ふと思いついて幼なじみの腕を捕まえると全力で嫌がられた。 それでもがっちり掴んで右手の紋章を発動させる。 この紋章は別の世界のものだが、この世界でも使えることは確認済みなので問題は無い。 「飛ぶよ」 視界が歪む。 ふっと身体が浮くような感覚の後、見覚えのある路地に着地した。 ユリに続いて危なげなく降りたカーティスにじと目で睨まれる。 カーティスは思いっきり唇をとがらせて言った。 「僕は魔法は嫌いです」 「知ってる。でも早く着いたでしょ」 「そういう問題じゃありません」 全く…、とカーティスがさらにぐちぐちと続けようとした瞬間、向けられる殺気。 急所めがけて飛んでくるナイフをたたき落とすと、それらを放った招かれざる客の方を見て、カーティスの口元にうっすらと笑みが浮かんだ。 「とりあえず、文句はあれを片付けてから言いますから」 「覚えていたら聞いてあげる」 カーティスが使うものよりやや太めのナイフを構えたユリが、面倒くさそうに応える。 深夜のスラム街の一角に、赤い飛沫が散った。 「ねえ、チェイカ」 「はい、ご主人様」 チェイカに髪を乾かしてもらいながら、アイリーンは先ほどの人物について考えていた。 稀代の暗殺者カーティス=ナイルの古なじみだという女性。 今晩は少し目を離した隙に二人ともいなくなってしまったため話すことはできず、そのまま帰ってきたのだが。 アイリーンの守り役頭であるチェイカは、カーティス=ナイルの弟子だ。 彼女ならユリについて、何か知っているかもしれない。 「カーティスの古なじみのユリっていう人、知ってる?」 「……ユリ様ですか?」 アイリーンの髪をぬぐっていたチェイカの手が止まった。 振り返ってみれば、驚きの表情の守り役頭の顔が見える。 ここまで彼女が驚いているのはちょっと珍しいかもしれない。 「知っているも何も、私にとっては第二の師のような方ですわ。ご主人様は彼女とお知り合いなのですか?」 「全然。今日カーティスと酒場にいるのを見かけただけよ」 「帰ってきてらしたのですか!」 チェイカは心なしか嬉しそうな顔だ。 しかも、ユリに対してはかなり丁寧な言葉遣いになっている。 カーティスに対して使う嫌みまじりの丁寧語ではなく、純粋に目上に対して、あるいは尊敬する相手に対して使っているようなニュアンスだ。 「ギルドでの修業時代、彼女にはとてもお世話になりましたわ。私がいた頃は既に暗殺者としての仕事はしていないようでしたが、ギルド内の世話だったり、私のような見習いの面倒をよく見てくださって」 チェイカがギルドにいた頃、たまたまユリも旅からギルカタールに戻っていた。 そのときはチェイカも含めて女性の見習いが複数人いて、同性ということもあったのだろうか、ユリにはよく世話をして貰った記憶がある。 正直に言うと、チェイカはユリについて全くといって良いほど知らない。 知っているのは、幼い頃からスラムで育ちカーティス=ナイルとは幼なじみであるということ、一時はカーティスと肩を並べるほど優秀な暗殺者であったらしいが暗殺者をやっていたのはごく短期間のことだったらしい、という程度。 そもそもギルドに所属していたのかどうかさえも不明で、しかし過去から現在へと至るまでユリのギルドへの出入りは自由のようだった。 しょっちゅう旅に出ており、ふらりと帰ってきてはギルドの…というよりは主にカーティスの仕事を手伝ったりスラムやギルドにいる者たちの世話を焼いたりしながらスラムにある自身の家で好きに過ごし、また旅に出る。 カーティスの命で諜報活動や潜伏任務をしているのだという見方をする者もいるが、おそらくそれはないだろうというのが古参の幹部たちのある程度一致した見解だった。 「…よくわかんないわね」 「そうなのです」 チェイカは苦笑した。 ユリという人物について正確な情報はほとんどわかっていないのだ。 おそらく本人以外に一番詳しく知っているのはカーティス=ナイルぐらいのものだろうが、あの男が漏らすとは到底考えられない。 つまりは誰も知り得ないのだ。 「カーティスとは幼なじみなのよね。今日見かけたときは、かなり親しいみたいだったけど」 「そうですね。互いに遠慮無くものを言える間柄のようですから。あのカーティス=ナイルと対等な位置にいられる人物は彼女くらいしかいませんもの」 「…すごいわね」 アイリーンはカーティスの部下たちと何度か会ったことがあるが、カーティスと対等の位置にいるような人物はいなかったと記憶している。 絶対的なギルドマスターと、その部下たち。 カーティスの実力的にも当然の構図であると思っていたアイリーンにとって、今の話は目から鱗だった。 「ご主人様は彼女に興味がおありですか?」 「そりゃ、あるわよ」 アイリーンは頷いた。 興味は、ある。 なんたってカーティス=ナイルの幼なじみだ。 しかも、アイリーンの守り役頭とも、シャーク=ブランドンとも顔見知り。 これは興味を持つなと言う方が無理な話だ。 「彼女もギルカタールの女ですし、ご主人様の求める普通には当てはまらないでしょうけれど…」 「でしょうね」 チェイカは少し困った顔をした。 まあ、まずあのカーティスの幼なじみという時点で普通なんてものは端から期待してはいないけれど。 「ですが、“普通”というものを知っている方ではありますわ。あの化け物ほど人間的にずれているというわけではありませんし、一度お話されてみては?」 なんだか酷い言葉を聞いたような気もするが、まあ的確な表現だと思うのでスルーしておくとして。 「スラムに家があるのよね?」 「ええ。カーティス=ナイルの自宅と近いところにあるようですわ。私は行ったことがありませんけれど」 「いきなり行って会えると思う?」 先ほどの酒場で二人とは思いっきり目が合ったので、おそらくユリの方もアイリーンのことを知ったはずだ。 だが、だからと言ってアポも取らずに行って果たして会えるのだろうか。 チェイカは少し考えるようなそぶりをして、たぶん大丈夫だと思いますと言った。 「ユリ様はご主人様の取引のこともおそらく知っているはずですわ。カーティス=ナイルに同行を頼むついでに訪ねてみては?」 ユリは本来部外者のはずだが、カーティスと親しく、かつ酒場で目が合ったとなれば取引についても知っているのが当然と考えてまず間違いは無い。 チェイカが見た限り、ユリは比較的同性には優しかった。 修業時代、年下の修行仲間の少女を割と気にかけていたところからしても、アイリーンに対してそう無下な態度は取らないだろう。 「明日行ってみようかしら」 今は取引期間中。 本来なら寄り道をしている余裕などはないが、どのみち婚約者候補の一人であるカーティスに用はあるのだ。 それに、取引期間が終わるまでの間にユリが旅に出てしまう可能性もある。 思い立ったらすぐに動く。 チャンスは逃さないうちにつかみ取るのが鉄則だ。 プリンセスとお知り合いになろう編2
チェイカの口調がわからない…!orz ちなみに、ユリとカーティス以外のキャラが彼らについて語った内容ですが、あれはあくまで第三者視点から見た限りではという話なので事実とはちょっと異なったりします。ユリとカーティスの間にある実際の認識と、第三者から見た彼らの姿との間に多大なるズレがあるので。 二人とも自分たちのことについて積極的に話すようなタイプじゃないので正確な情報が全然漏れなくて、ウソかホントかわからない情報だけが広がっていくという。 これ、そのうちちゃんと設定とかまとめた方が良いのかなあ。 2012.8.14
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