18 最悪が作る最悪な味






「さぁ好きなだけ食べてくれたまえ!」

とりあえず食事をしようという人識の提案で夕食ということになった。

もちろん料理は全て双識の手作りである。

満面の笑みでカレーを出され、は何とも言えない顔をした。

人識から最悪に不味いと聞いていたし、

おそらくそれ相応の見た目であろうと思っていたのだが、

目の前の山盛りのカレーは意外にまともである。

あくまで見た目は、だが。

ちらりと人識を見ればが一口目を食べるまで俺は口をつけないぞという顔。

「‥‥いただきます」

匂いは普通だし、そこまでまずくはないだろう――。

そう考えて、は一口、カレーを含んだ。

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

「どうだいちゃん!? 美味いだろう!」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

反射的にサラダ用のフォークを双識の目に向けて投げつけるのを抑えられた自分はかなり偉いと、は思った。

不味い。

この上なく不味い。

最高に不味い。

これこそ最悪だ。

「‥‥‥‥かなり、独創的な、味‥‥」

水でなんとか流し込んでからはやっとそう言った。

ああ不味い。

不味い。

水ではなくて牛乳を用意すれば良かったとは後悔した。

口の中に不快どころではない後味が残っていて、本当に不味い。

どう不味いのかと問われても、とにかく不味いとしか言いようのない不味さだ。

これはきっと食べた者にしかわからない不味さだろう。

はこのカレーを食べさせられたことのある全ての人に心から同情した。

「独創的な味か! うんうん、ちゃんは味が良くわかる子なんだね!」

いや、不味いという意味の独創的だから。

心の中で、と人識は同時に突っ込んだ。





18 最悪が作る最悪な味 end.


一回書いてみたかったカレーネタ。