17 一旦消去、そして上書き永久保存






「やぁやぁ初めましてちゃん!

 うちの人識くんがお世話になったようで、いやあんな愚弟で申し訳ない!

 何かご迷惑をおかけしなかったかな?

 それよりもこれは個人的な質問なのだけれど、

 ちゃんはスカートというものをはかないのかな?

 そしてスパッツというものをどう思うかい?

 ああしまったこの私としたことが自己紹介がまだだったね!

 人識くんが敬愛する兄零崎双識だよろしくねちゃん!」



やっぱり逃げておけば良かった。



零崎双識と対面して、は真っ先にそう思った。













「‥‥どうも、初めまして。です。えっと、双識さん。人識くんはいい子でしたよ」

スカートに関する質問は即断で無視することにして、

は後ろに下がりたい衝動をこらえながらもなんとかそう返した。

今まで様々なタイプの人間に出会ってきたにとって

零崎双識という人間は今まであったことのない未知のタイプだ。

どちらかといえば過去のは引かれる側の人間であったし、

今も昔も自分が他人に対して心から逃げたいと思ったことはほとんどない。

まずいカレーを食べてみたいなんて思うんじゃなかったと、

にしては珍しく心の底から後悔した。

「そうかい?ふむ、迷惑をかけていなかったのならそれに超したことはないのだがね。

 人識くんの無礼はこの私の教育が悪かったということなのだから、

 兄としては嬉しいよ人識くん」

兄の言葉に人識はひくっと唇の端を引きつらせた。

迷惑をかけているのはてめぇの方だクソ兄貴。

だが人識としては今まで人識が何をやっても平然としていたの表情を崩せたことは嬉しい結果なので何も言わず黙っておく。

一方のは零崎双識、《自殺志願》に関するデータを一度完全に消去した。

消去と言うよりは上書きに近いが、とにかく真っ白な状態に戻す。

そしてただ一言だけインプットした。








こいつはただの変態だと。









17 一旦消去、そして上書き永久保存 end.