14 古ビルの上と下やや古びたビルの屋上。 私のお気に入りの場所。 ここに来たからといって特に何をするというわけではないけれど。 空を見ながらぼうっと過ごすのも、悪くはない。 「ん?」 知っている気配を感じたような気がして、人識は立ち止まった。 辺りを見回してみるが、知り合いらしい人影はない。 というより、そもそも今人識が歩いている道に人はいない。 古びたビルが並んでいるだけだ。 「どうかしたのかい人識」 「‥‥いや、なんでもねぇ」 気のせいか、そう結論づけて人識はまた歩き出す。 双識も止めていた足を再び動かした。 「それで、そのちゃんだったかな? 彼女は一体何者なんだい?」 大通りから数本外れた人気のない道を二人は並んで歩いていた。 人識は今、の家に居候していた間のことについて話していたのだ。 「いや、よくわかんねーんだな、これが。もともと裏の人間だったことは間違いねぇけど。 ああそう、零崎の誰かと知り合いみたいだぜ。兄貴じゃねぇの?」 「いやいや私ではないよ。もし知り合いだったらとっくの昔に妹にしているさ」 「ってぇことは他の零崎か‥‥。まさか曲識のにーちゃんじゃねぇだろうし」 「ふむ、直接聞いてみるか。で、人識。ちゃんは妹になりそうかな?」 「うんにゃ、零崎じゃあ、ねーな」 二十歳の女性にちゃん付けかよという突っ込みをを人識はあえてしなかった。 は多少嫌がるかもしれないが、どうせ何を言ったって無駄なことだ。 「過去は知らねぇが、今は確実に違う。兄貴も会ってみればわかるんじゃねーの?」 「そうだね――。ふふ、ちゃんか。会うのが楽しみだ」 ふふふふふ、と双識は変態に笑う。 人識は双識から少し距離を開けて、軽く無視した。 14 古ビルの上と下 end.
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