05 いってらっしゃい






「お姉さん明日何時に起きるの?」

昨夜彼はこう聞いた。








ジリジリジリジリジリ。

目覚時計。

うるさい。

「もう朝・・・・・・」

だるい体を無理やり起こして、私は起きた。

ベッドから下りて軽く体を動かす。

・・・・・・よし、目覚めた。

服に着替えて顔を洗ってリビングへ。

ドアを開けたら、

「あ、おはようお姉さん」

エプロン姿の人識くんがいらっしゃいました。

「・・・おはよう」

「今朝飯持ってくから座って待ってて」

人識くんはそう言ってキッチンの方へ引っ込んだ。

テーブルへ目をやると、和食中心の朝ご飯が二人分。

おいしそう。

「魚とか期限近かったし勝手に作ってみたんだけど」

人識は焼き魚を置いて、自分も座った。

両手を合わせて、

「いただきます」

食べ始める。

「・・・いただきます」

私も食べた。

あ、お味噌汁おいしい。








しばらく無言ではしを進める。

どれもおいしかった。

特に魚の焼き加減なんかが私好み。

自分でやると焼きすぎちゃうからなー。

「おいしい?」

ほっぺたをふくらませて(かわいい、)咀嚼しながら人識くんが聞いた。

「おいしい。私より料理上手いかも」

「そりゃ良かった」

人識くんはかははと笑う。

「お姉さん料理苦手?」

「というより、あんまり好きじゃないだけ」

めんどくさいしね。

でも一人暮らしだから仕方がない。

「ふーん」


ぱくぱくぱくぱくごっくん。

「「ごちそうさまでした」」


あぁ、おいしかった。






「お姉さん学校?」

「そう。音大」

「だから防音設備ばっちりなんだ」

「このマンションは楽器持ってる人のために作られたからね」

そう、一流音大の近くに建てられたこのマンションはセキュリティ・防音共に完璧なのだった。

音大生や音楽関係の仕事についている人は優先的に住むことができ、

音楽界の著名人からの口添えがあれば家賃が安くなる。

ちなみに私はとあるソプラノ歌手の伝てを使っているので家賃は半額だ。

「暇だったらピアノ弾いてもいいから。お昼は適当に食べててもいいし、外でもいいし。

  これ家の合鍵。あとお小遣い」

鍵と共にがま口を渡す。

「いいの?」

「お金には困ってないから」

むしろありすぎて困ってたり。

踵がやや高めの靴を履いて、ドアの鍵を開ける。

「じゃ、いってきます」

「いってらっしゃい」





見送りがあるってのも、いいかもね。






05 いってらっしゃい end.


人識が幼く見えるのはわざとそう書いているからです。(17歳設定)
原作のときほど大人びてなくて、かといって竹取山ほど情緒不安定でもなく。
で、夢主の前では猫かぶり、みたいな感じで。