04 居候くんになりました






カレーを一口。

二口。

そして感想。

「…おいしい」

「そりゃ良かった」

もぐもぐと咀嚼しながら少年は笑う。

「料理得意なの?」

「そこそこかな。でも兄貴のカレーが最悪に不味くって、カレーだけは得意なんだ」

お兄さんがいるらしい。

最悪に不味いカレー、ちょっと食べてみたいかも。

「お兄さん心配してない?こんな時間まで外出して」

「家出中だからへーき」

わけありくんは家出少年だった。

「家出っつーか、その兄貴から逃げてるんだけどさ。年中やってることだから、別に心配はしてねぇと思う。追っかけてはくるけど」

心配してるから追いかけてくるんじゃないの?

「雨降ってきてちょおっと困ってたときにお姉さんが拾ってくれたからすんげぇ助かった。ありがと」

「それはどういたしまして」

少年はかははと笑った。

変わった笑い方だ。





食べ終わって、食器をお湯に浸す。

食後のデザートにイチゴケーキを出した。

「なァ、お姉さん」

イチゴを頬張りながら少年は言った。

「しばらくここに置いてくんねぇ?」

うん?

「家ってあんま好きじゃなくてさ。かといって金はあんまないし。今梅雨だから毎日雨だし。お姉さん優しいし」

優しいかどうかは置いといて。

あとはまぁ、正論だろう。

「兄貴に見つかるまででいいからさ。俺、家事もできるし。だめ?」

上目遣いで軽く首をかしげる。

結構かわいい。

じゃなくて。

・・・・・・まぁ、いっか。

一人分の食事を作るより二人分の方が楽だし。

家事やってくれるみたいだし。

「いいよ」

「ほんと?ほんとにいいの?」

「いいんじゃないかな」

少年は嬉しそうにはにかんだ。

右頬の月が歪む。

「ところでお姉さん。名前は?」

。少年は?」

「零崎人識。しばらくよろしく、おねーさん」

「こちらこそ、人識くん」





こうしてわけありくんで家出少年の人識くんは居候くんになりました。






04 居候くんになりました end.