03 雨と歌と鳴き声と。シャワーを浴びてから、浴槽につかる。 半身浴は上半身が冷えるから嫌いなので、お湯は肩が隠れるくらいだ。 外はいまだに雨が降っている。 ざァざァと、雨の音。 ボたボたと、雨の音。 私はこの音が、好きだ。 ふと思い付いて、メロディを口ずさむ。 あんまり売れなかったグループの、私が唯一気に入った歌。 バラード調の切ない旋律。 歌詞なんてほとんど覚えていないから、メロディだけを紡ぐ。 同じ曲を4、5回繰り返したところで湯船から上がった。 手早く服を着て、ドライヤーで髪を乾かす。 廊下に面したドアを開けると、ほのかにカレーの匂いがした。 「あっれェ?もう上がったの?」 キッチンに入ると、少年はなべをかき回していた。 「もう少し入ってても良かったのに」 言いながら、お椀になべの中身を垂らして味見をする。 どうやら作りかけのカレーを完成させたらしい。 「食う?」 勝手に食器棚をまさぐる少年に、私はこくりと頷いた。 ・・・・・・ぎゅるりと、腹の虫が小さく鳴いた。 03 雨と歌と鳴き声と end.
鳴き声=腹の虫 |