02 わけありくんを拾ってみた。



「お姉さんって変わってるな」
あぐらをかいてタオルで濡れた頭をふきながら彼は言った。
「普通、見ず知らずの奴家に上げたりするかぁ?
 俺、傘にいれてとしか言ってないんだけど」
彼の頬は湯上がりに紅くなっていて、体からはまだ湯気が立ち上ぼっている。
服は、彼がシャワーを浴びている間に乾燥機で乾かしておいた。
そのときに気付いたのだけど、彼のジャケットにはやけにポケットが多かった。
そして中にはナイフがたくさん入っていた。
・・・・・・わけありくんを拾ってしまったらしい。
ま、いっか。
「しかも風呂まで入れてくれるし。もっと警戒心持った方がいいぜ、おねーさん」
かはは――と彼はおかしそうに笑った。
右頬の月が歪む。
「そういう君はいいの?」
「ん? ああ、俺はいいんだ、別に」
「ふぅん、そう」
「そう。なぁ、お姉さんも風呂入れば? 心配しなくてものぞきなんてしねぇし」
ふむ。
じゃあ入ってこようか。
別に、のぞかれたって減るものは何もないし。
「お腹すいたら何か好きなもの食べてもいいから。なべの中は作りかけのカレー」
「りょーかい」

そして私は浴室へ向かった。

02 わけありくんを拾ってみた end.