01 ファーストコンタクト



そのヒトを見つけたのは、本当にただの偶然。


いつもの買い物帰り、日が落ちかけた雨の中。
ふと視線を向けた先に、彼はいた。
シャッターの閉まった商店の屋根の下に腰を下ろして、雨宿りをしていた。
顔を覆い隠すようなスタイリッシュなサングラスに、
ペイントなのか右頬には禍々しい紋様。
耳には携帯ストラップのピアス。
16歳前後の、青年と言うにはまだ幼く、
少年と言うにはやや大人びたどこにでもいそうな若者。
ちょっと装いが派手な、イマドキの。


  なのに

     なぜか気になって

 彼から視線が外せなかった。


私の視線を感じたのか、彼は私を見て一度首を傾げると立ち上がった。
髪を肩を全身を雨に濡らしながら、ゆっくりと近付いて来る。
私のさす傘のなかに入ってから、彼は言った。


「なァ、お姉さん――ちょっくら傘にいれてくんねぇ?」


それが彼と私の、ファーストコンタクト。



01 ファーストコンタクト end.


一話一話を短く、淡々と進む予定。