ある日海岸を散歩していると、五歳くらいの小さな男の子を見つけた。
さらさらの黒髪に、まんまるの大きな黒い目。
薄い桃色の、見るからにぷにぷにとしたほっぺた。
すこしぽやっとした愛くるしい顔立ちから見るに、きっと日本人だろう。
時折波に濡れそうになりながら、ぽてぽてと砂浜を歩いている。
彼のすぐ側には一匹の白い動物がいた。
ふさふさと長いしっぽを持つ、中型犬くらいの大きさの四つ足動物だ。
狐と狼の中間のような顔つきに瞳は鮮やかな紅色で、大粒のルビーにも見える。
男の子がふらふらと波打ち際に近づきすぎるたびに必死で袖を噛んで引きずり戻していた。
二人の動作をじっと見つめる。
朝焼けで波が光る中、波打ち際ギリギリを散歩する男の子と不思議な生き物。
思わずカメラを構えたくなったけど、我慢することにした。
人物を撮るときは先に許可を取るのがマナーだ。
そのうち、砂を蹴りあげながら歩いていた男の子が、ふとこちらを向いた。
視線が合う。
朝日を受けてきらきらと輝く黒色の瞳がこぼれ落ちそうなくらいますますまんまるに見開かれて――、
それから、ふわりと、笑った。
わたしは思わずシャッターをきった。
無意識に指がボタンを押してしまうくらい、無邪気で純粋さに満ちた、美しい笑顔だったのだ。
それから数週間後。
ドン・ボンゴレ十代目の招待を受けて訪れた屋敷で、わたしは彼と再会することになる。
男の子の名前は六道優斗。
ボンゴレ十代目の霧の守護者、六道骸の、最愛の一人息子だ。
海辺での出会い
2008.12.25
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