玄関ホールでそろそろ到着するはずの客人を待ちながら、アルフレッドはぐるぐると考えていた。
今日来る客人は父親が勝手に弟子と呼んでかわいがっている人とその娘で、どうしても娘さんと会ってみたいからと父親が招待したらしい。
と言うらしいその少女はアルフレッドよりもいくつか年下の日本人のようで、ということはカナタと同じくらいの子かなと見当を付けてみる。
「はぁ…」
周りにはアルフレッドと同じく出迎えの為にスタンバイしている大人もいるので我慢していたが、ついに大きなため息が出てしまった。
雲雀恭弥という男は幼い頃からアルフレッドをかわいがってくれるし強くてかっこいいし、いつもならば大歓迎をする彼だが今日ばかりは別だった。
客人の来訪さえなければあの砂浜へ出かけていこうと考えてばっちり準備までしていたのだ。
せっかくカナタへのプレゼントを用意していたというのに、明日まで待たねばならないというのがもどかしくてたまらない。
それでも雲雀に会いたくないわけではないのであまり表に出しすぎないように自分の顔をぐにぐにと手でもみほぐしていると、どうやら到着したらしいという知らせが入ってきた。
急に入った仕事を片付けに行っていた父親が戻ってきて、アルフレッドのぶさいくな顔を見て思わず吹き出す。
「アルフ、お前の予定を潰しちまったのは悪かったけどな、そんな顔してると恭弥に笑われるぞ?」
そう言ってディーノは息子の頭を勢いよくなでまわした。
親父の馬鹿ー!とアルフレッドがぐしゃぐしゃになった髪を大急ぎで直している間にもどうやら客人は着いたようで、ディーノはさっさと扉を開けて外へと出てしまった。
その後を小走りでついていったアルフレッドは、嬉しそうな父親の視線の先に立つ雲雀恭弥とその隣にいる小柄な少女の姿をみつけてあんぐりと口を開けた。
少女もまたアルフレッドに気付くと驚愕に大きく目を見開く。
「ええと、久しぶり、かな?」
そう言って困ったように首を傾けるカナタ、いや雲雀にアルフレッドの脳みそはもはやショート寸前で、
「え…、えぇぇええ!?」
言葉にならない絶叫をあげたのだった。
「きょーや!」
歴史を感じさせる立派な扉が開いてすぐ、金髪の男性が笑顔での父親を出迎えた。
それからの方へと視線を移すと、彼はまぶしいまでにきらきらとした笑顔をさらにきらきらと輝かせる。
自分の知っている少年によく似ている気がするのは気のせいだろうか、とは考えた。
そしてそんな彼の後ろからひょっこりと出てきた少年を見つけた瞬間、今度こそは本当に驚いた。
少年の方も、さくらを見てあんぐりと口を開けたまま固まっている。
そんな子ども達に気付いた大人組が注目してくるので、何かを言わなければと思ったはとっさにこう言った。
「ええと、久しぶり、かな?」
最後にジュニアと会ったのは少し前のことなので、この表現は決して間違ってはいないはずだ。
ジュニアの後ろにいるどこかで見たことのある五十過ぎくらいに見える男性が口笛を吹き、相変わらずフリーズしたままのジュニアの肩をとんとんと叩いて彼を現実へと戻してやる。
「え…、えぇぇええ!?」
しばらく口をぱくぱくとさせていたジュニア――キャバッローネファミリー十代目の息子であるアルフレッドは一拍置いた後、驚愕を顔に貼り付けさせたまま力一杯そう叫んだ。
とりあえず場所を移動して、日当たりの良い広々とした部屋へ移ったのちもアルフレッドの様子は全く落ち着かなかった。
と雲雀を見比べては頭を抱えたり、そわそわと落ち着き無く視線を彷徨わせては何かを呻いている。
そんなアルフレッドの様子に大人組は何かを察したらしく、しばらく放っておくことにした。
思春期の青少年の悩みはいろいろと複雑で、繊細なのだ。
「まさかアルフが言ってたカナタちゃんがのことだとは思わなかったなあ」
自己紹介も済ませた後、そう言ってディーノはぐりぐりとの小さな頭をなでた。
さらさらの黒髪は手触りが良く、大きめの黒い瞳は父親にそっくりだった。
目つきが似ているというわけではないが、凪いだ水面のように深く澄んだ黒の瞳は誰がどう見ても雲雀恭弥と同じものである。
「僕も、まさか海岸に落ちてたっていう少年があなたの息子だなんて思いもしなかったけどね」
さくらとアルフレッドが初めて出会ったときの状況を知っている雲雀はくすくすと笑いながら言った。
予想が大当たりで満足したのか、ずいぶんと上機嫌である。
は困ったように相変わらず挙動不審なアルフレッドとディーノを見比べていたが、が視線を向けるとますますアルフレッドの様子がおかしくなるのに気付いてひかえることにした。
お互い偽名を名乗っていたのだし、まああれくらいのショックは受けて当然かもしれない。
「ボンゴレにはもう行ったんだろ? あっちの子ども達とは会ったのか?」
「いや、みんな学校があったからね。まだ会っていないんだ」
あっちの子ども達とは、ボンゴレ十代目である沢田綱吉の子ども達とヴァリアーのボスであるザンザスの娘、ヴァリアーの作戦隊長であるスクアーロの息子のことだろう。
が二回ボンゴレを訪れたときは全員学校やら用事やらで不在だったので未だに会えてはいないが、このぶんだと近いうちに対面することになりそうだとは読んでいた。
何しろさくらの周りの大人達は子どもの為と言いつつ自分たちが一番楽しむような人たちばかりなのだ。
きっと何かしら理由を付けて会わせようとするに違いない。
ふとアルフレッドを見ればようやく落ち着いてきたようで、ばっちり視線があうとちょっと笑顔を見せた。
それには安堵して、はにかむような笑みを見せる。
その瞬間ボンっと音を立ててアルフレッドの首やら耳やらが真っ赤になったのに気付いたのは、いつのまにか師弟の会話そっちのけで面白がりながら子ども二人を見守っていた大人二人だけだった。
意外な再会
きらきら親子むずかしい! 誰かこいつらの書き方教えてください…。
アルフレッドの愛称にとても困りました。アルだと鎧やアルト姫になっちゃうし、史実通りにアルフレディーノだとそれこそ意味がないし。
というわけで無難なところでアルフになりましたが、今度は響きがエレフっぽい?
たしかに瞳の色は似てるけど(笑)、決して狙ったわけではありませんので。
ちなみに、アルフレッドの瞳の色はこんな感じです。→■
ピンク系の紫なイメージ。
2009.09.04
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