「あら、美形」 ボンゴレの本部にある交渉用の客間に通されたは、先に入室していた雨と嵐の守護者を見てまずそう言った。それからボンゴレの十代目に視線を向けると、声だけじゃなくてお顔もかわいらしいのねと艶やかに微笑む。 ――その瞬間、客間の室温が十度、下がった。 「初めまして、さん。ボンゴレ十代目沢田綱吉です。よろしく」 「こちらこそよろしく、ドン・ボンゴレ。美形を揃えてくださってありがとう」 まずは簡単な挨拶と、握手。の言葉でさらに室温が下がったような気がしないでもないのだが、綱吉はあえて気付かないふりをした。だってさっきから視線が痛い。視線っていうか、殺気が。 ちらりと殺気の発生源を見れば、片方はなんだこのアマというような顔をして額に青筋をたてているし、片方は何が気に入らないのか口元に笑みを浮かべながら無言で立っている。どうやら先日仕事を頼んだことがきっかけで雲雀とは付き合いだしたらしいのだが、これはもしかして嫉妬というやつなのだろうか。雲雀恭弥は結構独占欲が強いのである。トンファーを手に取ろうとしていないだけまだマシかもしれないが、どちらにせよあんまり心地の良い物ではない。今日無事に話し合いできるのかなぁと、とてつもなく不安に思った。 「守護者は全員美形って聞いていたけれど、本当にいい男ぞろいなのね。全員揃ってないのが残念だわ」 ふふ、と微笑んでは言った。ちなみに今揃っている守護者は雨と嵐と雲で、他は単独任務で出払っている。 「じゃあ、この間の件の話だけど」 とりあえず話が脱線する前に仕事の話をと切り出した綱吉にひとつ頷いて、は数枚の書類を差し出した。依頼した内容が事細かに書き記されていて、そこからも彼女の能力の高さを伺わせる。 「それで、ドン・ボンゴレ。殲滅戦になった場合に参戦して欲しいという話だったけど、それは私だけでいいのかしら。それとも、何人か出しましょうか?」 「ああ、はい、そうしてもらえると嬉しいです。できれば噂の姉弟子さんに出ていただきたいんですけど…」 が今までに手がけた仕事のいくつかには殺し屋のようなことをやっているらしい姉弟子が関わっていたこともある。できればその姉弟子の方の実力も見ておきたいと綱吉は思ったのだが、は首を横に振った。 「ごめんなさい。姉弟子はミルフィオーレのボスに気に入られて無理矢理ファミリーに入れられちゃったのよ。だからちょっと無理ね」 「‥‥えぇ!?」 その言葉には綱吉だけでなく、その場にいる全員が絶句した。ミルフィオーレのボスである白蘭といえば、数年前の約十年後にいろいろとあったものの現在はとても友好的な関係を築いている人物である。 裏の世界も以外と狭いんだなあ、とずれた思考をして、そこで綱吉はハッとした。ということは、彼女たちを鍛えた師匠は、もしかしてマフィアとかなり深い関係のある人物なのだろうか。 「さんのお師匠も裏関係の人ですか?」 「さぁ? あの人は裏の仕事はやらないから、関わりはほとんどないはずだけど」 綱吉はほっとした。良かった、さすがにそこまでは考えすぎだったらしい。 ところがは綱吉の顔をじっと見て、それからとんでもないことを言ってくれた。 「ただ、歴代のドン・ボンゴレの何人かと顔見知りではあったみたいね」 「は!?」 歴代のドンと知り合い!? 何年生きてるんだよその人!? 「二百年以上は生きてるはずだけど」 「どんだけー!?」 ツナは盛大に突っ込んだ。二百年って、二百年って! もうそれ人間じゃないじゃないか! 「だってあのひと人外だもの。殺してもなかなか死なないし。おまけにいつまでも若い姿のままでちっとも年取らないし、‥‥あのクソジジイ」 チッとは忌々しげに舌打ちをした。もはや最後の方は完全に文句になっている。そりゃ、女性から見たら外見年齢がいつまでたっても変わらないというのは羨ましい限りだろうが、それにしたって。 「なんか‥‥すごい人なんだね‥‥」 「全然。子どもを拾うのと植物を育てるのが趣味な普通の師匠よ」 いやそれ、全然普通じゃないから。 その場にいた全員が一斉に心の中で突っ込んだ。 05:意外な繋がり
姉弟子=綺麗な花白蘭verの夢主の百合ちゃんのこと。このふたつは同じ世界観なのです。 2008.03.05
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