翌朝になって執務室に顔を出した雲雀を見て、綱吉は引きつった頬を抑えながら思った。


――ほら、やっぱりこうなった。




「えっと、ご苦労様でした、雲雀さん。その、大変だったでしょう?」
執務室。机にはドン・ボンゴレ十代目、ソファには黄色いおしゃぶりを持つアルコバレーノとその向かいに雲の守護者。
長い足を組んで座る雲雀は、珍しく満足げな笑みを浮かべてそうでもないよと答えた。
「結局寝てきたのか」
「うん」
単刀直入なリボーンの問いに、雲雀は特に何の感情も見せずに頷いた。綱吉はああぁやっぱりと机に沈む。一応の上司の反応に、雲雀はむっと眉根を寄せた。
「どうしてきみがそんな反応をするの」
「だって雲雀さん、結局朝帰りになったじゃないですか!」
「いいんだよ、誘ったのは僕なんだから」
「‥‥え」
びしっと綱吉が固まった。リボーンも、カップに口をつけた体勢のまま動きを止めている。ぎ、ぎ、ぎ、と油のきれたロボットのような動きをした綱吉は、泣きそうな顔で雲雀を見た。雲雀はすました顔で言う。
「本当だよ。彼女もその気だったけど、先に手をだしたのは僕。気に入ったよ。いつか咬み殺したいね」
「‥‥それ、ディーノさんには」
「言ってないよ。言う必要があるかい?」
雲雀がに指名を受けたことを跳ね馬に教えた張本人であるツナは、雲雀の意味ありげな笑みを受けていいえと首を横に振った。なんだか今日の雲雀はやけに艶やかで、ふとしたきっかけさえあればすぐにトンファーを抜いてしまうような危なさがある。
触らぬ神になんとやら。
超直感が訴えかけてくるこの先に待ち受けているであろう様々な受難に、綱吉は全てを投げ出して逃げ出したくなった。


04:触らぬ神になんとやら


2008.02.09