「みんなー、転入生を紹介するぞー」 朝のHR。がやがやと騒がしかった教室は、見慣れない少女を連れて入ってきた担任のその一言で一瞬にして静まりかえった。視線が少女に集中する。彼女はイタリアから来たそうだ、という担任の説明など誰一人として聞いてはいなかった。いや、聞こえていなかった。あんまりにも整った容姿を持つその転入生に、皆一様に見惚れていたのだ。自己紹介をするように促された少女が口を開く。ごくり、主に男子の喉が鳴る音が響いた。 「初めまして、・ドッピオです。紹介の通り、イタリアから来ました」 いささか緊張したような空気を纏いながらも、ふわりと微笑む。その瞬間、クラスの九割以上の頬が赤く染まった。男子はもちろん、普通なら嫉妬心を持つであろう女子でさえ、その笑みのあまりの綺麗さにどす黒い感情など持つことが出来なかった。 腰まで届く、艶のある銀青の髪。深いスカイブルーの澄んだ瞳。日本人とは違う、陶器のような白い肌。まるで人形師が己の命を懸けて丁寧に作り込んだような、見る者を魅了する綺麗さがそこにはあった。ふわりと微笑む姿は天使というよりは女神と例えた方がふさわしいだろう。 「これから一年間、よろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げる。歓声が上がった。その声は廊下にも響き渡り、担任が止める暇もなく転入生はあっというまにクラスメイトに囲まれる。 最近いろいろと非日常なことがありすぎていきなり非日常が訪れてもある程度の冷静な思考が保てるようになってしまっていた沢田綱吉は、クラスののりについていけずに半ば呆然とその様子を見ていた。なんだこの空気は。何かがおかしい。ていうかまたイタリアか。最近多いよ。多すぎる。 彼の席は幸いにも教室の中心からははずれた位置にあるため、浮かれたクラスメイトたちの渦に巻き込まれることはなかった。同じように乗り切れなかった山本がツナのそばに避難してきて、すげぇなぁと感心している。ちなみに獄寺は今朝、あんまりにもかまってくれなくて寂しさを募らせた姉についに拉致されたために学校には来ていない。つい先日仲良くなった雲雀はというと、いつも通りにHRは欠席だった。彼は滅多に学校に来ないが、特にHRと一時間目の欠席率はほぼ100%と言っても良いほどだ。今回ばかりは、姿が見えない二人が少しだけ羨ましいと思う。だってなんだこの空気。絶対おかしいよ。 目の前には人垣。その台風の中心には転入生。 お約束の、質問タイムが始まった。 「身長は?」 「165センチ」 「血液型は?」 「AB型」 「好きな食べ物は?」 「和菓子」 「髪の毛綺麗ね! どんな手入れしているの?」 「ありがとう。特に何もしていないわ」 「どうして日本に来たの? 親の仕事とか?」 「ちょっと人に会いに。家族は皆イタリアよ」 「え、じゃあ一人で日本に?」 「大変だね」 クラスメイト達はすっかりこの転入生に惚れ込んでしまったらしい。質問の止まらないこと。そして騒ぎを聞きつけた他のクラスの生徒たちも、麗しの転入生を一目見ようと廊下に集まり始めた。窓際の一番後ろ、本来ならば雲雀の特等席である席に避難してその光景を眺めていたツナはいっそ見事だと思った。なんだこの光景。おかしいのはうちのクラスだけではなくて、学年全体がそうらしい。 どうやらイタリアから一人できたらしい転入生に、主に男子の胸が高鳴った。遠い異国から、一人で。きっと心細いことがたくさんあるに違いない。ここでかっこいいところをみせればもしかして! 男子中学生の思考回路は単純だ。 「な、何か困ったことがあったら言ってな! 力になるから!」 「あっずりぃぞてめぇ! 俺も俺も!」 俺も!俺も!俺も!そんな声が木霊する。あまりの勢いに女子がやや後ずさった。どさくさにまぎれて他クラスの生徒まで侵入し、名乗りをあげている。もはや担任は収拾することを諦めたらしく、教壇で頬杖をついて微笑ましく見守っていた。先生って大変だなぁ、と綱吉は思った。 大勢の男どもに囲まれ、頼ってくれえぇぇぇ!と叫ばれた彼女は、しかし微笑みを浮かべたまま表情を変えなかった。肝っ玉据わってるなぁ、と山本が隣で呟いたのが聞こえた。全くだ。普通なら、引く。泣き出してもおかしくない。やっぱり美人だから、こういう状況には慣れているのかなぁとぼんやりと考えていると、彼女は男達の名乗りがある程度収まった当たりでようやく口を開いた。鈴のような涼やかな声が響く。男達が恍惚とした表情になった。ぶっちゃけ気持ち悪い。 「ありがとう。でも、大丈夫だと思うわ。頼もしい人がいるから」 「た、頼もしい人‥‥?」 「ええ」 彼女の言葉にびっくりした男子がしどろもどろに返すと、彼女はしっかりと頷いた。え、まさか、‥‥まさか! 男達の間に嫌な予感がよぎる。反対に女子の間では、え、もしかして、きゃ! などと声なき喜びの悲鳴が上がった。嫌な予感に脂汗を浮かべている男達をぐいと押しのけ、今度は女子の壁ができた。女って恐ろしい。 「もしかして、彼氏いるの?」 「年上? どんな人?」 「まさか、この学校にいるとか? 会いに来た人って、その人!?」 答える暇さえなく次々に質問が重ねられる。最後の質問はさすがに飛躍しすぎだろうとツナは突っ込みたくなったが、次の瞬間びっくりして唖然となった。 「ええ、そうよ」 「えぇぇぇえ!?」 悲痛な絶叫と、黄色い悲鳴があがる。八割の男子が床に沈んだ。ヒットポイントは残り5といったところだろうか。対して女子はますますテンションをあげている。 もはや廊下におさまりきらなくなった他クラスの生徒は教室になだれ込んでいて、とんでもない人口密度になっていた。 「ね、名前は? 誰、誰!?」 熱のあがった女子の皆様が詰め寄る。瞳はきらきらと輝いていて、反対に床に転がっている男子たちは灰色だった。崩れかけている者もいた。中には後から集まってきた女子に踏まれ、とどめをさされた生徒もいて、魂がいくつか彷徨っていた。あぁ、ご愁傷様。 彼女は困ったようにはにかんで首を傾けた。さらりと、綺麗な銀青の髪が流れる。それを見て、あまりのまぶしさに数人の男子がぐはっと倒れた。ちょっと大げさすぎやしないか。窓際に避難したツナも山本も、背中をぺったりと壁につけてできるだけ目の前のカオスから離れようとした。間違っても巻き込まれたくはない。 しかし嵐はこれで終わらなかった。仕方がない、とため息をついて彼女が恋人の名前を口にしようとした瞬間、廊下からぎゃっという悲鳴が響いたのだ。それも一人ぶんではなく、複数の。 「ねぇきみたち。僕の学校で、何群れてるの?」 その言葉に、一瞬にして空気が固まった。ヒ、ヒバリさん! 誰かの悲鳴があがる。そう、廊下に立っていたのは、風紀委員長の雲雀恭弥だった。今日も今日とてトレードマークの学ランをしっかりと着こなし、トンファーを両手に悠然と立っている。 雲雀が騒ぎの中心であるツナ達のクラスに向かって歩き出すと、廊下にいた生徒たちが一斉に動き道を譲った。そしてクラス内に戦慄が走る。 まずい、このままでは噛み殺される――!! 開けっ放しになっていた扉へたどり突くと、雲雀は一歩踏み込んだ。担任教師は真っ青な顔をして教卓の下へと潜り込んでいた。おいおい先生、そりゃねーぜ。しかし誰も声に出しては言えなかった。視線が雲雀へと集中する。彼の一挙一動を声も出せずに皆が見つめる中、ただ一人、表情を全く変えない人物がいた。彼女だ。全員の心の中にしまった!という焦りが生じる。この麗しき転入生は並盛の秩序である風紀委員長のことを全く知らないのだ。 このままでは、彼女が危ない! しかし、彼らの心配は杞憂に終わった。 「あら、恭弥。何も言わないで転入したのに、気付くの早かったわね」 「これだけ騒ぎを起こしておいてよく言うね。にも言わないできたのかい」 「もちろんじゃない。言ったらつまらないでしょ?」 さっきまでの女神のような微笑みはどこへやら、彼女はいたずらっぽくにやりと笑って見せた。容姿の端麗さは先ほどと全く違わないのに、雰囲気がまるで違う。たとえるならそれは癒しの女神が獲物を狩るのが大好きな女王様に変わった、そんな感じ。 生徒達は絶句した。あまりの衝撃に、灰になっていた男子たちも復活した。声にならない悲鳴が渦を巻く。 雲雀恭弥の知り合い!?名前呼び捨て! じゃあまさか、恋人ってヒバリさんなの!? うそおぉぉ!という心の中の叫びは幸いにも雲雀恭弥の耳には届かなかった。もし届いていたならば、何か文句でもあるのとその場で全員咬み殺されていただろう。そのかわりに彼は滅多に浮かべることのない穏やかな笑みを浮かべて、逆に周囲の人間を怯えさせた。 あの雲雀恭弥が微笑んでいる! 「まぁいいよ。とりあえず応接室へおいで。の好きなお菓子もあるよ」 「本当? じゃあ行くわ。どのみちこのままじゃ授業になんてならないし、もまだいないしね」 ふふ、とどこか黒さを感じさせる笑みを浮かべて彼女は立ち上がった。風紀委員長のいる扉へと歩き出せば、きれいに人垣が割れて道ができる。まるで女王様だ、と誰もが思った。 「ああそうだ、担任。は風紀委員に入る予定だから、そのつもりで」 「ひゃいっ!」 思い出したように雲雀が言うと、がたがたと教卓の下で震えていた担任は裏返った声をあげた。すぐに書類を作りますと情けない声で叫ぶ。後で応接室に入らなければならない用事ができてしまい、担任の目には涙が浮かんでいた。憐れだ。 「じゃあそういうことで、お願いしますね、先生」 彼女はにこりと笑いかけた。そして、あっけにとられている生徒たちと半泣きの教師を残し、雲雀恭弥とともに悠々と教室を出て行く。二 人の姿が廊下の向こうに消えるまで、生徒達の凍結は続いた。 「ヒバリさんって、彼女いたんだ‥‥」 ようやく二人の姿が見えなくなってから、誰かがぽつりと呟いた。なんとか金縛りの解けた生徒達は、ぐったりした顔でそれぞれの教室へと戻っていく。一人、また一人と己のクラスへと戻っていき、教室には本来の人数だけが残った。自分の席へとついた生徒たちはほっと息をついて、しかしこれから雲雀恭弥の彼女がクラスメイトであるという苦難を考えてしまい誰とも無くため息が漏れた。 そこで彼らはふとあることに気付いた。彼女が雲雀恭弥の恋人なら、その弟である雲雀とも面識があるのだろうか。実はは群れを見るとすぐに咬み殺したがる兄を止めることのできるストッパーとして一般生徒に人気があったりもする。彼女のことも彼に任せられないだろうか。いや、是非とも引き受けて欲しい。クラスの平和のために。 全員がそんなことを同時に考えたとき、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。見えた学ランに風紀委員長が戻ってきたのかと一瞬身体を強ばらせた生徒達は、しかしそれがたった今頭に浮かんでいた雲雀であることに気付いて安堵する。だが、今日の彼はいつもと様子が違った。いつも眠そうな顔か飄々とした態度でいる彼にしては珍しく固い表情をしている。全速力で走ってきたのか、息もあがっていて肩が激しく上下していた。みしみしと音がたちそうなくらいきつくドアの一辺を握りしめ、もとが精悍な顔立ちなだけにすごみを増したすさまじい形相でクラスの中を見渡す。 誰もが何事かと息を呑んで見つめる中、息をある程度整えてからようやく彼は口を開いた。 「このクラスに、っつー女がこなかったか?」 クラスメイトは絶句したが、やっぱり、とも思った。誰が答えるかと視線で押しつけ合う中、ここはやっぱり最近仲良くなったらしい沢田がいいんじゃね?と全員の視線がツナに集まる。ツナは泣きたくなった。なんでオレ。 「えっと、来たよ。転入生だから珍しくて他クラスの人まで集まって来ちゃったりしたけど、ついさっきヒバリさんが連れて行った」 「‥‥あんのアマ!」 ぶち、と血管の切れるような音がしてがきれた。ばき、と拳が扉の一辺を握りつぶす。あまりにも怒気に満ちた低い声とその剣幕に、クラス中がびくっと震えた。怖い、怖すぎるよ。やっぱりこいつも雲雀恭弥の弟だ! 「騒がせて悪かった。悪い夢だと思って忘れてくれ。今日は初日だから猫かぶってたかもしれないが、あいつの中身ははっきりいって悪魔だからな、もし間違って惚れちまったやつがいたら速攻で諦めろ。命の保障はしないぜ」 の忠告に全員がこくこくと頷いた。それはもうさきほどの嵐で身に染みた。とりあえず、頼むからあの二人どうにかしてくれ! おそらく全員の瞳にそのメッセージが表れていたのだろう、は大きく息を吐いた。その表情は苦労人という名前をつけるにふさわしく、クラスメイトは彼の今までの苦労を悟った。 「悪いが、あいつに関しては俺は何もできねぇぜ。特に兄貴と組んだときはもう止められねぇ。関わらないのが一番だな」 死刑宣告に近いその言葉にクラスメイトの絶叫が響いた。そんな、お前だけが頼みなのに! 担任などマジ泣きだ。辞表を書こうとペンと紙を探している。あぁ、さらば平穏。さらば平和。俺たちの青春って! 「ま、そういうことだから、あんま俺をあてにしないでくれ。じゃ」 それだけ言って、はまたどこぞへとすっ飛んでいってしまった。おそらく行き先は応接室だろう。教室に、なんとも言えない空気が流れる。担任はあまりの絶望に目がやばい方向を向いていた。 結局、その日は全ての授業が自習になった。担任はその後の一週間、学校を休んだ。 学年全体に、世界の終わりのような空気が充満していた。 「ん、おいしい」 ず、と緑茶とともに和菓子を流し込んで、はにっこりと笑みを作った。場所は応接室。目の前のソファには同じように和菓子を食べる恋人の姿。今、彼女はこの上なく機嫌が良かった。転入生というシチュエーションを利用して予定通り面白い挨拶ができたし、そのおかげで彼氏はすぐに自分を見つけてくれた。応接室のソファはふかふかで彼女の好みだったし、出された菓子もお茶も彼女の大好物だ。一人、自分の相棒がこの場にいないのは、昨晩彼が彼の恋人のところに泊まりに行っていたということと、こうして並盛中学に転入することを伝えていなかったため当然のことだろう。 「それにしてもよく来れたね。仕事はどうしたの?」 「日本でもできるように手配してもらったの。このために半年間も準備してボスと兄様を説得したのよ。大変だったんだから」 「ふうん、そう」 雲雀はの仕事内容までは細かく知らないが、自分と会う回数や、しょっちゅう弟を呼び出しては手伝わせたりしている姿を知っているためそう容易に放り出すことのできない仕事なのだろうという予測はついていた。頻繁に会えないことに不満を漏らしていた彼女にじゃあ日本に拠点を移したらと言ってみたことがあるが、そのときはいろいろと弊害があるから駄目と即答された。だからまさかこうして日本に、しかも転入までしてくるとは思ってもいなかったのだが、どうやらついに遠距離恋愛に耐えられなくなったらしい。 はねりきりをおいしそうに口へ運びながら、実に楽しそうに言った。 「ちょっと家庭崩壊の危機ってところまで行きかけたのだけれどね。そこはほら、二人とも私には甘いから。そのかわり日本国内での長期の任務を任されちゃったけど、ま、それくらいは仕方がないわね」 もともと簡単にこれるとは思っていなかったし。ウサギ型の大福を頭から頬張って、ふふふと微笑む。片栗粉が唇について、舌で舐め取った。その仕草がなんとも艶めかしくて、雲雀の視線は思わず舌を追いかける。気付いたはちょっと笑って、誘うように二匹目のうさぎに口づけた。白い粉が赤い唇を際だたせる。雲雀は身を乗り出すと、腕を引っ張ってテーブル越しに口づけた。 「ーーーっ!」 そのとき、ばたん、と乱暴に扉が開かれた。肩を怒らせて入ってきたは、兄と親友のキスシーンをもろにみても表情ひとつ変えなかった。そんなものは見慣れているし、第一今はそれどころではない。 「てめぇなんでここにいやがる!」 「思ったよりも早かったわね、。てっきりのんびり登校してから気付くと思ったのに」 の予測では、何も知らないは三時間目か昼休みに社長出勤してきた後に気付く予定だったのだ。それが意外にも、一時間目の間にやってきた。ワオ、と彼氏の口癖を心の中で真似してみたりして、いいから座りなさいよとソファを叩く。 はじとっと半眼になったが、くしゃりと髪をかき上げると大きくため息をついて座った。 「ディーノんとこにな、ボスから電話があったんだよ。用件は今協議中の案についてのことだったんだが、俺がいるって知ったら教えてくれたんだ」 「ボスが? 言わないでって言ったのに」 むうと眉間に皺を寄せる。ボスとは彼女の父親のことだ。後で文句のひとつでも言ってやろうか。 「つーかお前仕事は? あんだけ俺をこき使って忙しい忙しい言ってたくせにいいのかよ」 「とりあえず当分は並中生をやってればいいようにしてきたの。それについては後でちゃんと説明するわ」 一応仕事の話は時と場所を選ばないといけない。雲雀になら聞かれても別に構わないが、学校という空間ではなるべく避けたかった。それがわかっているも、後でぜってぇ話せよと念を押して引き下がる。だが、彼はもうひとつ不満があった。 「で。クラスどころか学年全体を使い物にならなくさせた理由は」 「面白そうだったから。恭弥ってずいぶんと恐れられているみたいだから、どれくらいなのかなってちょっと試してみたの。そうしたら猫かぶりのおかげか男子たちは青春まっさかりな思考丸出しで集まってくるし、女子は女子できゃあきゃあ叫んでいるし、恭弥の権力は思った以上にすごいし。思わず笑っちゃった」 彼らには私はもったいないわよねぇ、とが言うと、全くだねと雲雀が笑顔で頷いた。 「あとできみたちのクラスに行こうか。男子は全員咬み殺す」 「やめてくれよ、頼むから。俺さっき、風紀委員長とその彼女をどうにかしてくれって泣きながら頼まれたんだぜ。頼むから大人しくしててくれ」 ぐったりとソファに埋もれる。の中で、今日という日は今までの災難ランキングベスト3に入る厄日になった。今までは兄一人だったから学校をさぼっても何も問題なかったが、これからはが学校にいる限り自分も登校しないといけない。一般生徒への被害を最小限に食い止めるために。ああなんてかわいそうな俺。思わず思考が変な方向へ流れた。 「そんなに心配しなくても、そうそう騒ぎはおこさないわよ。失礼ね」 はそう言ったが、果たしてどこまで信用していいのかは、の経験からすると限りなくゼロに近い。 これからの生活が思いやられて、重く深く、ため息を吐き出した。 01:転入生がやってきた
転入させてみた。‥‥途中でツナたちが消えた。 ドッピオは一応イタリア語で、二倍の、裏表のある、ダブルという意味らしいですが、もちろん偽名です。 2007.12.13
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