ある日、骸様が変な生き物を拾ってきた。
大きさは中型の犬か猫くらいの大きさの、白い毛並みの四つ足動物。
体つきと顔つきは狐と狼の中間のような感じで、しっぽはふさふさと長い。
大きなくりくりの瞳は鮮やかな赤色で、猫のような細長い瞳孔は黒。
まるでルビーの中に埋められた黒曜石のようだった。

「……骸様、それは?」
「拾ってきました。なかなかにかわいらしいでしょう?」

クフフと嬉しそうに目を細めながら、骸様が動物の頭をなでる。
抱えられている動物の方はというと、しっぽをべしべしと骸様の腕に打ちつけながら何か不満を表していた。
半眼になった赤い瞳がじっとりと骸様を睨みつけている。
ごろごろと顎の下をくすぐられてプルプルと震えていた動物は、ついに耐えかねたのかべしんと骸様の顔にしっぽをぶつけるとくわっと牙をむいた。

「だ−から顎の下をなでんじゃね−!」

がお!と噛みつく勢いで叫んだ動物は、もがもがと骸様の腕から抜け出そうと暴れはじめた。
骸様はそんな動物を笑顔で押さえ込みながら、やわらかな毛並みをなでたりぷにぷにの肉球を堪能したりしている。

「……犬がしゃべった……」

かわいらしい見た目を裏切ってその声は青年のものだ。
しかも、かなり口が悪い。
鋭い爪を振り回してようやく脱出に成功した動物は、呆然と呟いた私に向かって「だから俺は犬じゃない!」と叫んだ。





だから俺は犬じゃない!

クローム視点
2009.01.28

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