赤い記憶


雨の日は、夢を見る。




『――危ない!』

耳をつんざくブレーキ音。
回転する視界。
重い衝撃。
投げ飛ばされた身体。

ズキズキと痛み。
全身に赤。

――あぁ、これは、なんだっけ。

手探りで妹を探す。
さっきまで隣に座っていた妹。
手探りで弟を探す。
妹の向こう側に座っていた弟。
手探りで父を探す。
さっきまで家族を乗せて運転していた父。

――やめて。

手に、何かが、当たって。


――それ以上は、やめて!


痛む上半身を必死に持ち上げて見た、のは。




妹と、弟と、父の。




「‥‥い、おい、加奈!」
「――――っ!!」



誰かの声と、自分の悲鳴で目を覚ました。


妹と、弟と、父が死んだときの、赤い記憶。

雨の日は、いつも決まって夢をみる。




――だから、雨の日は、嫌いだ。




■Hunt the Hunt // 加奈

過去話。
雨の日の交通事故で妹弟父親を失ってから、彼女は雨の日によく悪夢をみる。
だから事情を知っている人達は雨が降るたびに心配してくれるんだけど、今回起こしてくれたのは誰なんだろう。
きっと海人かな。一応海人夢だし。
加奈がいつも黒い服なのはずっと喪に服しているから。
07.06.14