以心伝心竹馬の友

ぐう。と。
何とも間抜けな音を発した己の腹を見て、雷覇は動かしていた腕を止めた。
打ちかけの原稿を保存してから視線は時計盤へ。
最後にみたときとほとんど変わらぬ位置にある針を見て、またやっちまったと苦く呟いた。
立ち上がったところで鳴り響く軽快な音。
この着信音といえば、一人しかいない。
ナイスタイミングと唇を吊り上げて、雷覇は通話ボタンを押した。

『やぁ雷覇。進んでるかい?』
「おうよ。進みすぎて腹ぺこだ」
『また飲まず食わずで書いてたんだね』
「思わずのっちまってな。最後に食ったの半日前だ」
『‥‥それはまた長いね』

受話器越しに聞こえてくる、呆れの混じった苦笑い。
おそらくこの親友は自分が食べるのも忘れて執筆しているのを見越して電話をかけてきたのだろう。
書くのに夢中になってたまに食事睡眠を抜いてしまうことのある自分を予見することができるのは、家族とこの親友だけだ。

「久々だからなぁ。ところでスピット」
『なんだい雷覇』
「俺は今、旨いビーフシチューが食いたい気分だ」
『奇遇だね。僕もそう思って作ってたところなんだ』

おどけるようにさらりと返した相手ににやりと笑む。
さすがは我が兄弟よ、なんて台詞じみた言葉を吐き出せば、僕と雷覇の仲じゃないかと無敵の笑顔全開そうな声色で返された。







趣味の良い皿とスプーンでビーフシチューを一口、二口。
雷覇は満足げに向かいに座るスピットを見やる。

「ん。旨い」
「お褒めにあずかり光栄です」


にっと笑って視線をぶつけた一拍後。




二人の大爆笑が響いた。




■Hunt the Hunt // スピットファイア and 九霧雷覇

雷覇は自己管理ができる小説家だけど、たまーに筆が止まらずに飲まず食わずノンストップで書き続けることも。
それを察知してご飯を作っておくスピ。
互いのことならなんでも知ってる、仲が良い二人です。
07.06.05