07:





最後の客が帰り、閉店のプレートを下げた後。
カランカランという涼やかな音と共に開いた扉に、スピットは笑顔を向けた。
「やあ、よく来たね。ずいぶんとお疲れのようだけど」
「先代に弄り倒されてきたから・・・」
この店の常連客であるは疲弊した様子でお気に入りの椅子に座った。
咢とわかれたあとホームに戻ったはそこで待ち伏せていた雷覇に捕まり、咢とのことについて事細かに聞かれたのだった。
聞かれたというか、言葉の拷問で吐かされた、の方が正しいのだが。
これだったらまだ麗奈の方がマシかもしれない。
いや、麗奈のも誘導尋問近いからどっちにしろ吐かされることには変わりはないのだが、それでもまだマシだとは思う。
Crush Air二代目総長であった雷覇にあまり逆らえないは現在の状況について全て話した後今度はさんざんにからかわれ 、見かねた加奈が「髪染めに行くんでしょ」と助け船をだしてくれたことでようやく解放されたのだ。
「あの人も趣味が悪ぃ」
苦虫を数十匹噛み潰したような顔では言った。
の髪の状態を調べながら、スピットは鏡越しにくすくすと笑う。
「でもよく頑張ったねえくん」
えらいえらい、とにこやかにからかってくるスピットに、はあんたもか!と疲れたように肩を落とした。
「まだだっつーの! 先代にも言ったけど、俺はまだなんもしてねぇ!」
「おや、まだなのかい? キスしてたように見えたけど」
「あれは亜紀人がほっぺたにしただけだっ! ああもう、あと何回これを説明すりゃあいいんだ・・・」
顔を片手で覆って、はうんざりとした様子でぶつぶつと雷覇への恨み言を呟いた。
雷覇が加奈に『と咢がくっついた』と報告を入れてしまったため、加奈本人は何も言わなくとも加奈の隣でそのメールをのぞき見た麗奈がCrush Airのメンバー全員に情報を回したのだった。
今のところ本人からきちんと話を聞くまでは外に漏らさない方がいいのではという意見が数人からでたためチームメンバーとスピット・ファイアしかこのことは知らないのだが、なにせCrush Airのメンバーはかなりの数がいるのだ。
いちいち説明していたらキリがない。
後で緊急事態用の連絡網使って全員に否定してやるとは心に決めた。
だって、本当に何もなかったのだ。
雷覇とスピットは遠くの距離で、しかも何がどうなってあの体勢になったのかは知らないから勘違いするのも無理はない。
だけど、とは思う。
せめて言いふらす前に本人に確認をとってくれ。
亜紀人に抱きつかれた後のことを思い出して、は盛大にため息をついた。



Hunt the Hunt 05:

雷覇との会話で人をからかう趣味はないと言っておきながらからかうスピ。
彼のこういう大人な余裕が好きです。(大人か?)
でもとりあえず私はスピが大好きなので、スピの登場率は高くなると思います。現にもう2話出てきてるしね。美容師っていいなあ。
2006.8.10
これの続きを書こうとして書けなくなったらしい二年前の私。
何があったんだ? 
2008.7.20 修正