白は、あまり好きではない。
もっと正確に言うならば、白に自分が塗りつぶされるような錯覚を覚えるような環境にいることが嫌いなのだ。
だからの私室の壁紙は模様入りの淡いラベンダー色だし、シーツも同じ色で合わせてある。もっとも、圧迫感さえ覚えなければ白も決して嫌いではないので食器などは白で揃えてあるが。
白は全てを塗りつぶす。その下にどんな色があろうと、まっさらなゼロに戻してしまう。確かにあったはずなのに、まるではじめから無かったかのように完膚無きまでに覆い隠す。
だから、は白が嫌いだ。
…自分でも呆れるほどに白に対して敏感になっているというのに何故白の化身にも見えるこの男のコイビトなんてものをやっているのかは、自分でも甚だ疑問だが。
きっと、白の中に潜む紫に惹かれたのだろうと、思う。
紫はの好きな色だ。紫は死にも通じる、綺麗で、残酷で、美しい色。どこか人を惹きつけてやまない、蠱惑的な。
白蘭の一番の美点は、あの美しいアメジストの双眸だとは思っている。
全てが白い中、ただひとつ色をもつ瞳。ときには鋭利な光を宿し、ときには無邪気に輝き、それだけで美術品にも匹敵するほどに整った容貌すら踏み台にして圧倒的に君臨する。
白蘭の部屋は全てが白で統一されていて、正直言ってあまり長くいたいと思うような環境ではない。
それでもが大人しく白蘭の隣におさまっているのは、最も近い所からその至高の宝石を愛でることができるからだ。
真剣に書類を処理する横顔、休憩時間に見せる微笑み、ボスとして指示を下すときの他者を絶対的に従わせる者の鋭い視線。
それらを全て間近で見、ときには独占することすらできるこのポジションは、おいしすぎてなかなかやめられない。
だから、はここにいる。
白を厭い紫を愛でながら、白と紫を併せ持つ一人の男の隣に。

魅惑の紫色 2

ちゃんがさりげなくのろけてますね。彼女は基本的に美しいものが好きなので、白蘭のお顔は相当お気に召したようです。
白嫌いは彼女が前の職場にいたときに白がらみでちょっとゴタゴタがあったからなんですが、さりげなく別作品絡みネタです。(ロジェが白い波に呑まれたシーンなんか、もう号泣しながら読みましたよ!)

2009.04.01